パネルB:国民皆保険制度と混合診療の禁止

 さて,現在,国民健康保険の治療にそれ以外の治療を組み合わせて行うことは禁止されています.


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パネルC:保険外併用療法の新設

 ただ,国保に認められないが,近い将来認めても良いような有望な治療を,「評価療法」「選定療法」として,国保と併用して行っても良いとする,「保険外併用療法」というものが作られた.


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パネルD:保険外併用療法の中で,有効なものは国保の中に取り入れられていく

もちろん,この「保険外併用療法」の中で,有効なものは国保の中に取り入れられていくのである.

 実際に,1ヶ月に1度,専門家が,一同に集まり,いろいろな治療法を検討し,保険外併用療法の中に入れたり,また,保険外併用療法の中で効果がハッキリしていて有用なものを国民皆保険の枠に導入している.

 ちなみに,今回の「混合診療の禁止は違憲」ともとれる判決を出した東京地裁で,そもそも,患者は保険では認められない「自己リンパ球移入療法」を受けていたが,この治療法,実は11998年11月に高度先進医療の適用を受けた。ただ、特定承認保険医療機関ではない神奈川県立がんセンターでは保険との併用ができなかった。  

 もっともこの自己リンパ球移入療法は、06年1月の中医協総会で「有効性が明らかではない」と判断され、同年4月から取り消されている。

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参考資料

混合診療、全額負担は違法
・東京地裁、がん患者の訴え認める

 保険対象の治療と対象外の治療を併用する「混合診療」に保険を適用せず、患者に全額負担を求める国の制度の是非が争われた訴訟の判決で、東京地裁(定塚誠裁判長)は7日、「国の健康保険法の解釈は誤り」と指摘し、混合診療の原則禁止を違法とする初の判断を示した。


 混合診療をめぐっては、患者の負担軽減のため全面解禁を求める意見の一方、医療の安全性確保などの側面から弊害を指摘する声も根強い。厚生労働省は控訴するとみられるが、判決はこうした議論や医療現場に大きな影響を与えそうだ。(21:47)

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混合診療判決 どう皆保険と折り合い  
平成19年11月9日20


 保険診療と適用外の自由診療を組み合わせた「混合診療」を、国が原則禁止にしているのは法的に根拠がない。東京地裁がおととい示した判断は、難病や重い慢性病で、少しでも早く改善につながる治療をしたい患者にとっては、高額な自己負担を免れ、前進といえるかもしれない。


 ただ、混合診療を無制限に認めると、経済的余裕のある人だけが受けられる治療が増えて、国民皆保険制度の崩壊を招きかねない。一定の歯止めは不可欠だろう。患者のためにどうするのがベストか、もっと幅広い視点から議論を深めるべきだ。


 原告は六十歳の男性で、二〇〇〇年十二月腎臓がんと診断され、翌年には頭などへ転移していることも判明した。保険適用の薬で当初は治療し、月約七万円を払っていたが、三カ月後に適用外の「自己リンパ球移入療法」も受けることになった、という。


 その自由診療分の費用は月約五十万円。普通に計算すれば計五十七万円となりそうだ。だが、混合診療の禁止によって、本来の保険適用分まで一体の自由診療とみなされ、七十五万円かかることが分かった、というのだ。患者が補助的治療を望んだだけで、なぜそこまで負担しなければならないのか。素朴な疑問を抱くのは道理だろう。


 問題は、今回の判決が健康保険法の法的解釈ばかりにこだわり、混合診療を認めることによる社会的な影響にまでは踏み込んでいないことだ。


 かつて小泉内閣の規制改革・民間開放推進会議では、医療費削減を図るため混合診療の解禁が打ち出された。自由診療分を増やしていけば国や企業の負担分は減るからだ。当然ながら、保険証を持っているだけで一定水準の治療が受けられる皆保険制度がなし崩しになっていく懸念が、日本医師会や患者団体などから指摘された。


 一方、海外では使われているのに日本では保険適用でない新薬などの使用を、がん患者らが望む例も増えている。ただ、その場合も薬の審査をもっと速くできるようにするのが本筋ではないか。


 先進医療や医薬品の治験など一定のケースでは既に保険・自由診療の併用が認められている。緊急に補助的な医療を加えるのが必要だと医師が判断したケースに限り、患者の自己責任で認めるなど、個別に柔軟な運用も考える必要があるのではないだろうか。

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混合診療訴訟、国が控訴  「全面解禁の弊害」引き続き主張へ

 混合診療を受けた場合でも患者に公的保険給付を受ける権利があるとする判断を示した東京地裁判決に対し、国は16日、判決を不服として控訴した。1審判決は「法解釈の問題と混合診療全体の在り方の問題とは次元が異なる」として、「混合診療の全面解禁」が引き起こす弊害には触れなかったが、国は1審同様、全面解禁の問題点を主張していく方針だ。政府の規制改革会議は1審判決を受け、急きょ15日に原告の男性からヒアリングを実施。国に対して控訴を断念するよう求めたが、国は方針を変更することなく、高裁であらためて主張の正当性を訴えて

いくことを決めた。

 混合診療をめぐっては、日本医師会が(1)事前に有効性・安全性が認められている保険診療と認められていない自由診療を併用し、自由診療部分に問題が発生した場合、保険診療の信頼性まで損なわれる(2)併用を認めると自由診療から保険診療に移行させるインセンティブが働かなくなり、保険給付の範囲が縮小する(3)公的保険の範囲が縮小すると、所得の少ない国民にとって負担増となる?の3点を挙げ反対している。裁判では国も同様の主旨の主張を展開した。しかし、この点について1審判決は判断を避けた。

 この裁判は、神奈川県立がんセンターで2001年9月から、保険診療の「インターフェロン療法」と自由診療の「活性化自己リンパ球移入療法」の2つの治療を受けていた神奈川県藤沢市の男性が、インターフェロン療法まで保険給付を受けられないのは健康保険法と憲法に違反するとして06年3月に提訴した。

 国は裁判の中で、(1)療養の給付は疾病の治療を目的とした一連の医療サービスを指し、自由診療が加わった場合は一体として療養の給付は受けられない(2)保険外併用療養費制度によって、混合診療で保険給付の対象となるものを限定的に挙げており、これ以外の混合診療は給付の対象とならない?の2点についても主張した。しかし判決は、保険診療と自費診療を一体と見て保険診療部分も全額自己負担になるとの根拠は健康保険法では明文化されてないとして、国の訴えを退けた。

●「有効性が不明」として高度先進取り消し

 厚労省によると、男性が受けていた自己リンパ球移入療法は1998年11月に高度先進医療の適用を受けた。ただ、特定承認保険医療機関ではない神奈川県立がんセンターでは保険との併用ができなかった。もっともこの自己リンパ球移入療法は、06年1月の中医協総会で「有効性が明らかではない」と判断され、同年4月から取り消されている。11月19日 メディファクス 5290号

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