総合医は,梧鼠 之 技(ごそ の わざ)とは・・・・

この漫画は医学生やこれから専門科を選ぶ若い医師に向けて描いたのである.よく意味を咀嚼して欲しいのだ.

梧鼠 之 技(ごそ の わざ):様々な技能をもっているが極めている技能がないこと。または、役に立つ技能が一つとしてないこと。
「梧鼠」はむささびのことで、飛ぶ、木に登る、泳ぐ、穴を掘る、走るという五つのスキルがあるが、どれも極めてはいないことから。

 すなわち,むささびは,空中を飛べるが屋根には届かず,木登りは出来でも頂上には行けず,泳げるが谷川を渡れず,穴を掘れても身を隠すほど深くは掘れず,走ることは出来ても人より速く走ることは出来ない.

 結局,こうした五技があっても一つのことに徹底できず,行き詰まってしまうことを言う.「梧鼠は五技にして窮す」の略である.

 さしずめ,今いろいろ政府の肝入りで言われている,「総合医」とは,このようなものであろう.

 医師は,煎じ詰めると,所詮「技術屋」.技術のない医者は世間で何の用もない.

 

 昔は,一人の医者がなんでもやった.腹痛から,外傷から,お産までなんでもやった.

 ちょっと前まで,外科は,「大外科」と言われて一つだった.

 腹部外科が中心で,その次に胸部,そして,整形,脳外科 とあった.麻酔科は外科の「おまけ」みたいなものであった.

 それが時代とともに,別れ独立した.

 一昔前,「皮膚泌尿器科」と言っていた.主に性病を診ていたのである.

 それが,今は「皮膚科」「泌尿器科」と分かれた.

 時代とともに,枝分かれしている.そしてそれぞれが,学問的に進歩している.

 医師として修行するからには,この専門科を自分で磨かなければならない.そして,そのうちの一つを習得しなければならない.

 残念ながら一つしか習得はできないものだ.それが技術の分化である.それぞれが,深まっているのだ.そして世の中ではその水準が求められる.

 総合医を志望する人が,今や3番目に多いという.

 総合医,というと,全部研修して全部できるようになると考える医学生が多いのだろうな,と思う.しかし,それは子供じみた幻想である.

 また,今はあまりにも多くの専門科に分化し過ぎて,どこの科にかかって良いのか分からないで困っている患者が多いのだ,という意見もある.だが,実際に患者は自分の症状を考えて,大方は適当な科にかかるものだ.また,そのようにして診てもらったところで,適切な科に紹介される.それで,「どこの科にかかって良いのかわからない」ということは大方解決される.

 それでも,「どこの科にかかっても診てくれない」と訴える患者さんはいるものだ.それは大方,「どこの科にかかっても治らない」と考えている患者さんである.つまり,もうすでに,沢山の科にかかっているのである.そのような患者さんが,あえて「総合診療科」を受診したとき,満足のいく成果が出るのであろうか.それはあることもたまにはあろうが,おそらくすごく稀なことであろう.

 結局,総合医,というものは,今,政府が一生懸命,提唱しているのである.政府としては,アメリカやイギリスで行われている「家庭医」の制度を導入したがっているのだ.まず,住民はその地域の「家庭医」(総合医)に檀家のようにあらかじめ登録しておく.そしてその住民が病気,怪我をしたとき,まずは,その自分が登録している「家庭医」(総合医)にかかる.そこで治療できるものは治療し,そこで無理なものは,そこから専門の科を紹介する,という制度である.

 そうなると,医療費が節約できる,と政府には考える人が多いのだ.しかし,アメリカ,イギリスを診ていると,実はそうではない.日本よりずっと医療費がかかっている.結局,二度手間になり,余計に医療費がかかってしまう.また,患者はなかなか自分の目指す科に行けずに,イライラも溜まる.

 しかし,政府の人や官僚にはこのシステムが大好きな人が多いのである.

 その人たちが,単に,「総合医」と言っているだけなのである.

 Young Doctorたちよ.政府の安っぽい,うたい文句に騙されていはいけないぞ.踊らされるのよ.

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