崩壊しつつある病院で産婦人科医師によりしたためられたひとつの意見

---私の言いたいことをズバリ言ってくれました.

目次  最近の医療情勢に対する解析の記事   A企画へのアクセス  掲示板  掲示板


目次

兵庫県にある柏原病院の小児科存続危機(上)

柏原病院の小児科存続危機(下)

この二つの記事を読んだ「1児の母」さんからの投書

産婦人科医師からの「1児の母さん」へのお返事(←これが当記事のポイント)

A企画のコメント

-

柏原病院の小児科存続危機(上)  丹波「未来」新聞 平成19年4月5日

 県の1日付け人事で、 県立柏原病院の院長に前副院長の酒井國安氏 (57) =小児科=が内部昇任したことにより、小児科の実働医が1人になり、 同科の診療が休診の瀬戸際に立たされている。 県に対し、 強く後任医師の派遣を求めているが、後任は決まっていない。 残る1人の医師 (41) は、 補充がない場合は5月末での退職を訴えており、 悪くすれば実働常勤医が 「0」 になる。小児科と密接な関係にある産科も、 小児科がなくなれば医師引き上げの対象になる。 異動がもたらした小児科、産科の危機的な局面を2回にわたり報告する。 (足立智和)

  ■  □  ■
 同病院小児科は昨年、 3760人の入院患者と10266人の外来患者 (救急含む) を診た。 同科の医師は、 昨年4月に1人減った。 前院長らが、 3人体制に戻そうと1年間、 医師招へいに努めたが叶わず、 2人体制を余儀なくされている。

 疲労が激しく、 2人でこれまで通りの診療体制を続けるのが難しくなったため、 小児科外来は4月から「開業医からの紹介を受けた予約患者のみ」 にした。 しかし、 外来予約制は、 酒井氏が院長就任の打診を受ける前に「医師2人で診療を続ける前提」 で実施を決めたもの。 1人で治療は続けられないという。 日中の外来、 入院患者のケア、 検査のみならず、 24時間体制で、 救患 入院患者の急変 いつ産まれるか知れない病的新生児への備え?があるからだ。

 人事担当の県病院局管理課は、 「小児科医が不足しているからといって適任者を院長にしないという議論にはならない。酒井氏が院長になったからといって、 全く小児科を診ないというわけではない。 院長の職務のうち、 他の管理職で対応可能なものであれば、適当な分担の元でやっていける話だ」 と、 院長と実働医の一人二役を求めている。

 現在、 同院長は小児科機能を低下させないため予約外来の診療に立ち、 輪番当番日の当直も、 ICU (集中治療室)の当直にも加わっているが、 院長の最大の任務である、 医師の招へい活動ができていない。 同院長は、小児科医の仕事にほぼ専念できた副院長時代から週に2、 3日は同病院に泊まっている。 院長職に就き、 仕事量が増えた今、副院長時代と同じだけ小児科医として勤務するのは、 事実上不可能だ。

 院長同様に、 もう一人の医師もほぼ毎月、 時間外勤務が100時間以上に達しており、 オーバーワークで診療を続けている。「患者さんも医者も命の綱渡り状態だ。 もうこれ以上の負担増には耐えられない」 と悲痛な叫びを上げる。 交代要員がおらず、 1人が連休を取ると、もう1人が12日間連続勤務になるため、 互いに連休は月1度ずつに抑えている。 医師が3人いた時は、 年2回ずつ参加できていた大きな学会にも、昨年は1度も参加できなかったという。

 柏原赤十字病院の産科休止の影響で、 柏原病院でのお産が増え、 小児科による新生児の治療が今後大幅に増加することが見込まれる。柏原赤十字病院の小児科が常勤医1人で診療を続けているが、 柏原病院の小児科が入院患者を受け入れなくなると、 小児科輪番制度が崩壊する。

 県は今年1月の 「丹波地域医療確保対策圏域会議」 で、 今後の地域医療提供体制について 「小児、 産科の入院機能は県立柏原に集約」 とする将来方針を提案したが、 医師は増えず逆に減る方向で、 構想との整合性が保たれていない。

 同院長は、 「精一杯やってもらっているもう1人の医師の負担を増やすことはできず、 できる限り診察に当たる。 この地域の母児医療を守りたい。 1日も早く後任を」 と、 一日千秋の思いで、 後任医師の着任を待ちわびている。

-

柏原病院の小児科存続危機(下) 丹波「未来」新聞 平成19年4月16日

 県立柏原病院産科は、 柏原赤十字病院の産科休止による影響分と合わせ、 3人の医師で、 今年度年間400前後の分娩を引き受ける予定をしていた。

 しかし、 酒井國安前副院長 (小児科) を院長にする県の4月の人事異動で小児科の実働医が1人減り、 後任医師の補充がないことに端を発した同科の存続危機で、 産科が休診の瀬戸際に立たされている。

 小児科医が減ったり休診になり、 新生児医療が担保されない病院からは、 産科が引きあげるのが一般的。 3医師が籍を置く神戸大の産婦人科医局からも、 「小児科機能がなくなれば、 産科引きあげ止むなし」 と伝えられているという。

  ■  □  ■

 同病院産科は、 すでに受け付けたお産は対応するが、 「小児科の存続可否の状況を見て判断せざるを得ない」 と、 11月以降の予約受け付けの保留を検討している。

 同病院でお産ができなくなると、 丹波市内にお産施設がなくなり、 11月下旬以降3月末までに、 少なくとも130人程度が他施設を探す必要に迫られる。

 06年度に同病院で産まれた赤ちゃんは275人 (丹波市212人、 篠山市61人・里帰り出産含む)。 うち、 43%の117人が小児科にかかった。 帝王切開 (出産数の約20%を占める) の場合、 赤ちゃんが仮死状態や未熟児であることも多く、小児科医が全ての手術に立ち会っている。

 普通分娩でも、 母親の5人に1人は、 赤ちゃんに髄膜炎や敗血症をもたらすB群溶連菌を膣や肛門周辺に持っており、 産道を通る際に赤ちゃんが感染する可能性がある。

 このため、 同病院では、 帝王切開、 B群溶連菌保菌者の母親から生まれた赤ちゃんは、 産後すぐに小児科に入院させ、 「安全のベール」で包んでいる。 おう吐、 発熱、 黄だん、 元気がないなどの 「ちょっとしたトラブル」 もできるだけ小児科で担い、 危険の芽を摘み取っている。

 20年ほど前、 小児科のない病院でお産に携わっていた同病院産婦人科の丸尾原義 (もとよし) 医師には、 忘れられない経験がある。帝王切開の手術中に急に母親が全身けいれんの発作を起こした。 取り出した赤ちゃんは呼吸をしておらず、他科の医師が応援に駆けつけたものの赤ちゃんの処置はできず、 「この子は助けられない」 という声が聞こえた。

 丸尾医師は手術台を降り、 母親の処置を他の医師にゆだね、 赤ちゃんを抱え小児科がある西脇市民病院まで救急車で搬送した。 幸いに母子とも命を救えたが、 この時の恐ろしさが身に染みている。

 「新生児には専門的な処置が必要。 母子双方の治療を産婦人科だけで行うことは、 極めて困難。 仮に小児科がなくなり、それでもお産を続けろと言われた場合、 医師のミスでなくとも、 不可抗力的な事故が増加し得る。 しかし、 それが許される時代ではないだろう」と話す。

 例えば、 妊娠高血圧症 (中毒症) の場合、 赤ちゃんを取り出せば母親の血圧は下がるが、 以前は未熟児の対応ができず、取り出した赤ちゃんが死ぬことがあり、 早産では生死が知れぬと、 子を長くお腹に持って無理をした母親が命を落とすこともあった。未熟児医療の進歩で母児双方を救えるようになり、 日本を世界でも妊産婦、 新生児死亡率の低い国へ押し上げた。

 同病院は小児科医が未熟児を診る体制を維持しており、 妊娠高血圧症や糖尿病などを持つハイリスクな母親も、 一定レベルまで引き受けている。小児科が未熟児を診れなくなれば、 ハイリスクな妊婦は、 済生会兵庫県病院、 神戸大学病院、 県立こども病院 (いずれも神戸市)などへ行かざるを得なくなる。

 同病院の上田康夫副院長(産婦人科)は、「柏原病院で母児医療を続けるには、 小児科医の力が不可欠。地元で生みたいという人の思いにこたえたいが、 酒井先生が院長になられ、 小児科の実働医師が減るのは致命的。 ただ、 県病院局は、こういった小児・産科の現状は十分理解されていると思うので、 近々に後任医師の手配をしていただけるものと確信している」 と言う。

 丹波小児科医会の松本好弘会長 (まつもと医院院長) は、 「病院の小児科医は最低限2人必要。 1人ではお産が入ったり、転院搬送が必要な患者が出ると外来がストップする。 都市部の病院も小児科患者を受け入れてくれにくくなっており、 紹介先を探すのに困っている。柏原病院に小児科医をとにかく1人、 緊急に招いてほしい。 心から祈っている」 と話している。

  ■  □  ■

 最低限1人の小児科医を補充すれば、 差し迫った危機は回避できる。 県病院局は、 自らが震源地となり引き起こした柏原病院の母児医療崩壊危機に対する責任を、 医師補充という形で果たさねばならない。 (足立智和)

-

   

左:兵庫県立柏原病院  右:柏原市の位置(兵庫県の内陸部にある)

「1児の母さん」(ハンドルネーム)からメールによる問い合わせがありました。

メールの内容は「5月までで小児科が終わってしまうかも...と新聞で読みました。」というフレーズから始まります。「1児の母さん」は1人目の出産を柏原病院でされておられるようで、もし病院に小児科がなくなってしまい、さらに産婦人科もなくなってしまった場合、自分たちはどうすればいいのかと記しておられます。そして最後を「どうかこの柏原病院で出産させてください。この先生たちにお世話になりたいのです。お願いします。」という文章で結んでおられます。
「1児の母さん」へのお返事

 こんにちは。

 このたびは貴重なメールをいただいてありがとうございます。
 先日丹波新聞の記者さんが現在の柏原病院を取り巻いている医療環境についての取材に来られました。記者さんにはいろいろ私たちが日頃から考えていることをお話ししました。その記事が掲載された後さまざまな反響の来る事を予想していましたが、4月16日現在「1児の母さん」様のメールが1通だけでした。「1児の母さん」様には当院の小児科医、産科医に対してありがたいお言葉を頂戴し感謝いたしております。

 私たちはこれまで当地域の毋児医療のために微力ながらその一端の役目を果たしてきたつもりですが、実際にはもう私たちの努力だけではどうしようもないところへ来ている感が否めません。

 ご存知かもしれませんが、今日本全国で医師不足から特に地域医療のこれまでの体制が大きく崩れようとしています。もともと毋児医療の主体である小児科や産科は時間外勤務の多い不安定な勤務時間と毋児双方への責任に対する重圧などのためか、医学生達の多くはなりたがらず、いつも医師不足がつきまとってきた歴史があります。それでも日本中の多くの小児科医、産科医は「1児の母さん」のような地域からのご期待に精一杯応えようとして努力してきました。

 柏原病院のまわりでも、本年3月には隣の柏原日赤病院が産科診療を中断したのと同様に、これまで産科医が配置されていた多くの近隣の公立病院が次々と産科診療を断念しています。一方、小児科医も最近の豊岡病院の例を挙げるまでもなく、地域の基幹病院といえども小児科医の配置は思うにまかせなくなっています。

 なぜこんな医師不足が次々と起こるのでしょうか?

 こうした医療崩壊の原因の一つには、2年前に始まった「新臨床研修制度」が上げられています。「新臨床研修医制度」とはこれまでの大学医局が一手に行ってきた卒業仕立ての研修医教育を大学以外の多くの一般病院でも行おうとするもので、医師の病院間配置に良くも悪くも大きな変革をもたらしました。「白い巨塔」と揶揄され批判される事の多かった医局人事制度ですが、全てが悪かったというわけではなく、私どものような地方への医師配分については大学の人事責任者はそれなりに医師の事情、地域の事情を考え人材を配置してきたのです。しかし、「新臨床研修医制度」は私たちの派遣先であった大学病院を直撃し、大学の医局はもはや関連病院への人材派遣を担えなくなりました。この影響はもともと少人数で維持してきた小児科や産科といった診療科に危ぶまれてきたのですが、最近では柏原病院の内科にみられるように他の診療科にも現れ始めています。

 しかし、私自身は今地方で次々に起こっている医師不足の原因は今の日本の医療制度に内包される根本的な問題に根ざすような気がしています。

 産科を例にとりあげてみます。20世紀半ば1940年、当時の母体死亡率は出生10万あたり239.6人以上を数えており、『三(産)と四(死)は隣り合わせ』という言葉が実感を持っていた時代でした。しかし、その後母体死亡率は急速に低下、2003年には6.1人にまで減少、周産期死亡率に至っては現在出生千に対して5.3 (2003年) と世界中で飛び抜けて低い値を示すまでになっています。

 そうした中で、大多数の国民の間には「お産安全神話」すなわち「お産で人命が失われる事はない」という認識が広がってしまったようです。しかし、現在の日本でもなお年間50名程度の母体死亡は存在するという厳然とした事実があります。もし不幸にして母体死亡、新生児死亡がいったん起これば、マスコミを先頭にした産科医パッシングが行われます。「助けられたはずだ」「助からなかったのは何か過誤があったからだ」という論調が新聞紙面を踊ります。
 私達を含めて多くの産科医達は「一生懸命救命努力をしても、結果が悪ければ治療内容を誹謗され、逮捕すらされる国」で医療を行って行く事にもう疲れきっているのです。もう心の芯が折れかけているのです。

 そしてこうした傾向は産科や小児科だけに留まらなくなっています。特にその影響が大きいのが救急医療とそれに主役を果たす内科、外科、麻酔科といった診療科です。

 日本の多くの病院勤務医は労働基準法に守られることもなく、昼間、夜間の診療にこれまで献身的に携わってきたと思います。患者さんからは「いつでも看てあたりまえ」「夜間にも専門の医者を呼べ」などという言葉を受けながら、自身の専門以外の診療範囲でも全能を尽くして診療に当ってきたと思います。しかし、そうした要求は田舎町の動物園にパンダがいないといってクレームをつけるようなもので、そんな無理な体制をいつまでも続けるわけにはいかないのです。

 こうした毎日のはてに、病院勤務医?特に地方自治体病院の医師の多くはだまって「立ち去る」ことを考え始めたのが現状なのです。これを識者は「立ち去り型サボタージュ」と呼び、「医者は不平をいわない、ただだまって辞職していく」と分析しています。いずれにしても日本の多くの地域で従来の医療体制がもう立ち行かなくなっていることは明確な事実なのです。

 丹波地域での毋児医療は今存続のきわどいラインの上に立っています。いや、病院自体が機能存続のきわどい綱渡りを続けています。今日本中で産科施設の集約化が進められようとしています。

 産科医は今後増えて行く要素はなく、今後もどんどん減り続けることは確実なようです。医学生の多くはこんな診療科にはなりたがらないのです。国家も、産科医の減少にあわてて産科医を増やす、あるいは保護する政策誘導をするよりは、むしろ通達によって開業診療所を閉鎖させ、一方で助産所を増設して分娩を産科医から助産師へシフトさせる事を目論んでいるようです。

 こうした政策をいったい誰が主導しているのか私には及びもつきませんが、10数年後には産科医が多くの地域から消散し、助産所での分娩が当たり前になるかもしれません。それは毋児死亡率の高かった一世代前の毋児医療に戻ることを意味するのですが、為政者の誰もそれに気づかない、いや気づかぬふりをしているだけかもしれません。

 現在、まだ私たちは精一杯日常の業務を続けています。しかし、崩壊の波は地震波のように急速な勢いで日本中に広がりかけています。私たちは関連大学や行政にも現状の医療情勢への対処を訴えました、がしかし、現実に本地域で働く小児科医を守る手だてを得る事はできていません。
 同様の問題を抱えた日本の他の地域では、市民の皆さんが地域の市長などとともに医師確保に声を上げています。しかし、本地域では残念ながらそうした動きを見る事はできません。

 現在の毋児医療や救急医療が実際に直面している問題点をご理解された上で、本地域の医療を最低限守るためにはどうすることが最善なのかを考えていくことは、いずれ、本地域にも押し寄せるであろう待ったなき集約化や統廃合の波に立ち向かう上でそれは必要不可欠な宿題です。その時になって、市民達が地域エゴの立場からしか医療を考えられなければ、本地域からは全く基幹病院が無くなってしまう可能性も大きいのです。

「1児の母さん」に一つお願いがあります。
 
 もし、柏原病院の小児科や産科医の存在を少しでもご評価していただき、われわれがこの地でそれなりに満足できる医療を続ける事を許していただけるなら、どうか、現在の医師不足、医療崩壊について市民の声を上げて下さい。どうか、近所の方やお友達に、丹波市や篠山市における今の医療情勢について教えてあげて下さい。そして私たちのふるさとの未来を担う子供達やお母さんの健康を守るため地域の立場からどのような現実的な取組ができるのかを一緒に考えていただけるようお伝えください。

 よろしくお願いします。

                兵庫県立柏原病院
                    産婦人科 上田康夫

【コメント】

  まず最初に・・・私はこの産婦人科医師の上田康夫先生のお考えに心から感動した.

 もし,本気で,周産期医療に小児科医,産婦人科医を十分に配置してきちんとしたものにしたいと本気で考えるのなら,周産期医療に関する医療裁判を起こすことを禁止することしかない.直裁に言わせて貰ったが,これしかない.

 この一連の記事を読んで,自分なりにいろいろと勉強になった.自分は医師ではあっても,産婦人科医でも小児科医でもないので,現在の周産期医療というものをよく知らなかったな,とあらためて思った.

 私は,お産というのは,産婦人科医がいれば出来るものだと思っていたが,なるほど,現代のレベルを支えるためには,産婦人科医と小児科医がいなければいけないのだな,と思った.
 母親の5人に1人は、 赤ちゃんに髄膜炎や敗血症をもたらすB群溶連菌を膣や肛門周辺に持っており、 産道を通る際に赤ちゃんが感染する可能性があるということまで考えると,なるほど,小児科医に待機して貰うことも必要だ.

 どこの科でもこのようなことはある.となると,なるほど,医師は数の面でも明らかに不足している.

 自分が以前に述べたように,女医さんが増えているので,女医さんのリタイア率を考えると,医学部の定員を100人から120人に増やさなければ,私の卒業した20年前の水準にはならないし,現在の医療水準を維持するためには,もっと沢山の医師が必要とされる.もちろん,それにかかる医療費も増やす必要があろう.

 こんなことは日本国しかやっていないというのなら,財政の面で奇天烈な考えと言うことになるが,医師数の面でも,医療費の面でも,いわゆる先進国の中では統計上明らかに最低レベルであるので,医師の数を増やし,医療費を増やすというのは,奇天烈な考えではなく,むしろ常識的な考えであろう.

 ただ・・・ただ,医療というのはもう一つの側面がある.仕方がないとあきらめる,という側面である.現代の医療水準というものがあるが,これをあきらめるという選択枝もあるということだ.

 お産を例に取れば,昔は『三(産)と四(死)は隣り合わせ』であったのだが,現代でも,これでも仕方がない,という考え方もある.母体死亡率が10万人中現在の5人から230人にあがるだろうが,助産婦によって行わせる.そのような選択肢も医療というものには確かにある.

 「周産期医療に関する医療裁判を起こすことを禁止する」などというのは,法律を作らなければダメで,これは政府が精力的に取り組まなければならない仕事となるわけだが,少なくても今の政府にそのような動きも考えもない.むしろ,助産所での出産を進めようとしている.ということは,政府は国民に「仕方がない.あきらめよ」という選択を強いている,ということらしいですね.


【今すぐ出来る対策】

 とにかく,兵庫県の住民が柏原病院の存続を心底願うのなら,柏原病院には救急外来を辞めて頂き,平日9時から5時までの診療としてもらう以外にない.そうしないと,本年度中にこの病院は崩壊するだろう.

 あと,柏原病院は時間外手当を満額きちんと医師に払うべきだろうね.これをケチっていると,本年度中にこの病院は崩壊するだろう.

 あと,くどいようだが,この上田康夫先生も述べておられるように,医療崩壊の主原因は研修医制度.だから,これを廃止すべきだろう.


柏原病院で配られた悲壮なチラシ:子供を守ろう お医者さんを守ろう

 コンビニ感覚で夜中でも訳もなく来院していると,医者はいなくなる!

井関友伸先生のブログより

目次  最近の医療情勢に対する解析の記事   A企画へのアクセス  掲示板  掲示板

掲示板に投稿された意見を抜粋して記事に載せることがありますが,ご寛大なお気持ちでご容赦下さいませ(一部改変することあり).ご不快に思われましたら,掲示板,または,consultanthokkaido@gmail.comの方へご一報下さいませ.削除いたします.

掲示板2 を新設しました.皆様のご意見の新規性(ノイエス)をなるべく保ちたいと思います.従来の掲示板か,この掲示板2のどちらかにご意見をお書き込み頂ければと思います.

 掲示板2 http://9111.teacup.com/consultanta/bbs

inserted by FC2 system