30代,あるいは40代のある内科医(経験10年+α)の希望を聞いてみると・・・売り手市場のはずの就職難
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医師不足がだんだん深刻になって来てはいますが,一方で,転職を考えるドクターも多いものです.ドクターの側から見ると,病院の勤務状況がわかりにくいので,思うように就業を決めかねる所もあるようです.故に,思い切って今までファジーな部分をクリアにして,ドクターを求めれば,ある意味,可能性は非常にあるのではないでしょうか

 仲間の話を聞くと,ドクターも苦しく悩んでいるのです.なんでもざっくばらんに言える人間というのは案外と少ないものです.すると,悩みが始まる.

 自分の地元だと,どこかと話をすると,その様な話がいろいろな教授や偉い人,仲間,先輩にパーーと広がり,色々な人が「相談にのってやる」とか言って出てくる.自分の元(?)主任教授が出てきたりすることもある.どんどん渦中の人になる.ますます,ものが言えなくなる.

 本来ならこのような話は秘密裏に進めたい.表に出せないこともたくさんある.そしてすべてが決まったときに,初めて公表する.そのようにしたいものですが,「どれどれ」と首をつっこんでこられると,本当に困りもの,というか,妨害行為でしかない.転職などうまくいかなくなるものです.

 それでもそこで有利な条件が出てくるなら良いのですが,しかし,そこで提示される病院は,ある意味で医局のジッツや関連の病院ばかり.内情はよく知っている.どこも人手不足で,労働条件が厳しくなっているところばかり.つまり,現在の職場と同じようなところばかりです.

 また,変に人を知っているので,いろいろな条件を出すのもはばかれる.どんどん聞いたり条件を提示したりすると,変な人と思われかねない.そのようなことで,ドクター自身が動きが取れなくなっているのが現状です.これを「売り手市場のはずの就職難」と呼んでいる人もいるのですが,まことに現在の状況を看破したものとお聞きしたときに感心致しました.

 すると結局は,医師自身が人材派遣業者に頼ることになります.人材派遣業者は,ある意味でざっくばらんに病院側と交渉をしてくれるし,言いにくい事も言ってくれます.ドクター自身は傷つかない.良いことずくめであるが,人材派遣業者から医師を受けたりすると,その病院は,その人材派遣業者に300-400万円くらい(年収の2割くらい)を就業が決まると同時に先払いしなくてはいけない.すぐに辞められても文句は言えない.これは大変な出費となります.また,アングラな業者も多いのが現実です(下記新聞記事参照・・・待望の医師、市「焦り調べず」 防衛省医官の兼業発覚).

 そんなことより,下記のようにファジーなところをなるべく潰したクリアな条件で求人広告を出せば検討する医師は少なくはないと思いますし,人材派遣業者に莫大なお金を払う必要もなくなると思うのです.


勤務先を新たに求める10年目医師が出した条件・・という設定で書いてみました.

【希望する勤務地】札幌,およびその周辺    あるいは,北海道全域

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【給料】年収 1500万から2500万(地方は高くなります)

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【定期昇給】1年毎に月給を10万-15万円上昇.これを就業5年目まで

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【有給休暇】年間30日(1ヶ月前に有給休暇を取る日を病院に伝達する)

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【学会】年2回.学会1回につき2日間を出張扱いとする.もし,それ以上休むようなことがあれば有給休暇を使用する.

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【週末】週の半分は待機.しかし,それ以外は原則フリー(隔週で待機とフリーというようにする)

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【勤務時間】月〜金:9時から18時(この中で1時間は昼休み.1日8時間勤務).月から金までのうち,ある曜日の午後を研修日とする.その代わり,待機している週末,土,日は1日2時間まで勤務する(入院患者への対応).それ以上のものに関しては時間外手当支給の対象とする) これで,法定労働時間の週40時間が守られる.

【平日の時間外とは】19時以降の外来,入院患者へ対応した場合は,時間外手当支給の対象とする.ただし,調べもの,学会の準備等に対しては,時間外手当の支給の対象としなくても良い.

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【当直】月に2日まで可.労働基準法に基づき原則として寝当直とする.救急外来に来た患者に対応した場合は,時間外手当支給の対象とする.当直の翌日は午後1時から非番とする.それを取るのが困難であれば,その翌日の午後を非番とする.当直手当に関しては貴院規定に従う.

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【夜間,および,休日の外来患者への対応】原則として,フリーな時間はフリーである.故に,その様な患者には対応しない.ただ,体調が悪くなく,また,自分が飲酒等をしていず,近隣にいる場合は対応することもある.ただし,当然であるが,このような労働に関しては時間外手当支給の対象とする.

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【時間外手当の算定について】労働基準法に基づいて算出する.年収から交通費,時間外手当を除いたもの(税引き前)を,12で割り,かつ,それを,168時間(月間労働時間)で割る.すると,時給が出る.その時給に基づいて時間外手当を算定する.

 労働基準法より病院の一般事情に併せて改編して提示(当ホームページ 時間外手当の項を参照
19時から翌朝8時までを時間外労働に該当する時間とすれば・・・

1)19時〜23時,および,翌朝5時から8時:医師の時間給×1.25 が,その時間帯の時間給になる.
2)更に,23時〜翌朝5時(深夜労働):医師の時間給×1.5 が,その時間帯の時間給になる.


註)定期昇給について:もちろんこれは一つの例としてあげた.5年目までにこのくらい上がれば,これは充分だろう.20年分の昇給を5年でやってしまったようなニュアンスだ.実際,医師というのは短期で動くものでる.このように募集をかけたり,人材派遣業者に頼んで来てもらっても,1年,長くて2年で辞めてしまう例がほとんどだ.それが現実だ.ならば,現実に即応した定期昇給を考えた.

 医療情勢も厳しいし,診療報酬が上昇基調にあれば,長く先を考えた定期昇給の約束も出来ようが,今の現状では無理.5年先までを示した.

 この定期昇給の額を高いと見るか,安いと見るか,それは個々人,各々の病院の見方というものがあって当然.しかし,人材派遣業者に頼むと,300万から400万の手間賃が取られる.定期昇給が年ごとに10万上がるとするとこれはかなり魅力的だと思うし,人材派遣業者に払うお金はこの2-3年分となる.と考えると,現状をみるに決して高いお金ではないと思うが...

註)有給休暇:各病院の就業規定にもよるのだが,例えば,開院記念日で休み,とか,北海道神宮祭で休み(北海道ではこの祭りに休みのところが多い)とか,病院の方で,たとえば,飛び石のゴールデンウィークの中を休むとかした場合,このとき,有給休暇を当てることがある.病院の就業規則で,時に開院記念日を休むとか,北海道神宮祭で休むと言う規定が無ければ有給休暇を当てることになる.雇用者側はこのように5-6日なら有給休暇を割り振っても良いのである.これは覚えておこう.

註)細かいことであるが,職を求める医師は,この条件,これと類する条件を出す場合,最初から病院側にこの条件をコピーさせない方がよい.徹底してメモを取らす方が良い.最後に就業が決まったとき,契約書としてお互いに持つのが良いと思う.

註)病院側は医師と交渉するに当たって,決まるまで他言は無用.やはり秘密保持が原則である.このような交渉が他者に知れ渡った場合,A企画としては交渉を打ち切る所存です.

註)このような条件であれば,就業を検討してもよいというドクターを数人知っております.もし,雇い入れたい,とお考えの病院があれば,まずはメールでご連絡下さい.consultanthokkaido@gmai.com 


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【参照記事】

待望の医師、市「焦り調べず」 防衛省医官の兼業発覚

2007年05月22日18時27分

 秋田県男鹿市立の「男鹿みなと市民病院」が非常勤の内科医として採用した女性医師(30)が、兼職が禁止されている国家公務員の防衛省医官だったことがわかり、計4日間診療しただけで市はこの医師をやめさせた。病院は医師を紹介してもらった仲介者に693万円を支払っていた。市側は「詳しく調べず、公務員とは気づかなかった」と話しており、医師不足に悩む地方自治体の焦りが背景にありそうだ。

 市によると、雇用契約を結んだのは今年3月28日。契約期間は1年間で、月曜日朝から水曜日夕方にかけて通算50時間の診療を月に2回行い、月ごとの報酬は100万円という内容。この契約に基づき、医師は4月23〜25日と5月1日の4日間、内科医として診療にあたった。

 しかし、市議から詳しい事情を尋ねられた市が、5月1日に医師本人から聞き取り調査をした結果、陸上自衛隊に籍を置く医官とわかった。市は2日以降の診療をやめさせ、契約を解除した。

 市などによると、同院は昨年4月以降、もともと10人いた常勤医が半減した。市幹部らはここ2年間、知人を頼るなど様々な方法で医師を探してきたが、見つからないままだった。今回の医師は市幹部の知人のつてで、「医療コンサルタント」を名乗る男性から3月27日に紹介され、翌日に契約。病院の事業会計からコンサルタント料63万円と成功報酬630万円を支払った。医師が辞めることになり、成功報酬の返還を求めたが、コンサルタント側は「契約は成立した」として拒否しているという。

 市は当初、提出された履歴書などから「東大付属病院で研修中」と認識していたという。佐藤一誠市長は「市民に喜んでもらえると焦ったばかりに異常な契約を結んでしまった。医師不足は変わらないので、今後は適切な契約を結び、医師確保に努めたい」と話している。

 陸上自衛隊は「事実関係を確認中」としている。
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A企画へのアクセス consultanthokkaido@gmai.com

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